「微力ではありますが」

 教皇様の日本司牧的訪問が無事に終わりました。とてもびっしりとした日程で教皇様の体の調子を心配させるぐらいでした。東京ドームのごミサの説教で教皇様は日本司教団が考えたテーマに沿って環境と人間の尊厳を守る大切さについて話されました。

 カトリック信徒だけではなく、やはり多くの日本市民が関心を持っているテーマだと思います。そして教皇様は人の精神的な悩みにも触れました。例えば孤独感を覚えたり人生の意味を見失ったりする人々は現代の日本社会では少なくないでしょう。ごミサで読まれた福音書の箇所でキリストが三回ほど「思い悩むな」と言われたことを強調して、天の父に対する信頼の大切さ、またそれは受け身になることを意味しているのではなく、むしろ主の力に頼ってキリストの愛を証しすることだと説明されました。

 前回の巻頭の言葉では「主はきっと教皇様を通して日本にいる私たちに大切なメッセージを与えてくださると思います」と書きましたが、この最後の言葉はその大切なメッセージではないかと感じました。環境破壊の問題、貧困の問題、家庭崩壊の問題、孤独や他の精神的問題、などなどの問題の前に、私たちは自分の無力をよく感じます。無力を感じる人は逃げたくなります。自分で何もできないと思って諦めてしまいます。確かに私たちには以上のような問題を解決する力はありません。マザーテレサは貧困の問題を解決しませんでした。解決しようと思わなかったのです。ただ、一人そしてもう一人を助けようとしただけです。主に身を委ねて、マザーテレサが言ったように「主は成功ではなく、忠実を求めておられる」ことを心にとめる人こそ微力でもキリストの愛を証しし続けることができます。

 これから待降節に入ります。私たちはキリストの誕生を記念して祝いますが、キリストの恵みにまだ与かっていない方にとっては、キリストはある意味でまだ生まれていません。その方々のためにも私たちの微力な「証し」を続けましょう。

2019年12月9日
ミラノ外国宣教会 宣教師
カトリック大船教会(横浜教区)
主任司祭ターディフ・マルコ神父

 

ローマ教皇フランシスコ、東京ドームにて ミサ(2019年11月25日)